匠 vol.3『一瞬賭命』 プロギャンブラー のぶき
プロギャンブラーのぶきとは
15年かけて世界のカジノにて勝ち続けたお金で、世界6周したプロのギャンブラー。
大学在学中、友人の就活・就職後の状況を見て、就職だけが仕事でもないと気づく。
卒業後、バイトを4つ掛け持ちし独立資金として1000万円を貯蓄。
そこからブラックジャックを極めるべく修練の旅に出る。
あまりにも破天荒なのぶき氏の経歴。
枠にはまらず常識を壊し続けるのぶき氏だが、講演後の満足度も高いことが評判を呼び、登壇のオファーは途切れることがない。
Google検索では「プロギャンブラー」で上位独占状態。
現在、講演やメディアでの活動へ積極的に取り組むのぶき氏。
今回はプロギャンブラーとしてだけではなく、講演家としても一流ののぶき氏にこだわっていることを伺った。
講演活動について
講演テーマの豊富さ
「主催者様の要求に応える」ことが第一だと語るのぶき氏。
過去の講演実績は260本を越え(取材時点)、主催者は大企業・学校・ニコニコ動画など実に幅広い。
特に世界的講演メディア「TEDx」には3回登壇。
休みたくない仕事を選べ | Pro-Gambler Nobuki | TEDxMeijiUniversity
のぶき氏の講演テーマは、20以上のテーマを軸に組み合わせていくという。
主催者と綿密に擦り合わせを行いながら、今回のテーマ用に新しく追加し、その講演一回限りのコンテンツを作り上げていく。
「僕は一度も同じ講演をしたことがありません。異なる相手へ同じ講演したら、ベストな講演とは成り得ない。勝負の世界は、ベターじゃ斬られますから。仮に、同じ主催者様から同じテーマで依頼を頂いたとしても、前回開催の翌日に自己反省会し、改善させてます。せっかくお話を聴いていただく時間をもらっているのですから、一年以内に聴講者へプラスの変化が起こるよう、毎回全力で準備をしています」
今回speakers編集担当はのぶき氏の著書『勝率9割の選択』(総合法令出版,2014年)を拝読。
その中で特に印象的だったフレーズが「『勝ち』にこだわるな、『勝つ準備』にこだわれ」だ。
現在メインで活動しているフィールドはメディアや講演会。
活動拠点は変わったものの、徹底的に準備をする姿勢はプロギャンブラーのころから一切ブレていない。
講演対象
「企業からご相談を頂くことが多いですが、大学やニコニコ超会議などのイベントにも頻繁に登壇しています」
先日は某大手保険会社にて「勝ち続ける8つの術~プロの流儀~」を披露。
プロギャンブラーの中でもほんの一握り、「神の領域」といわれる勝率9割を叩き出したのぶき氏の「勝ち負け」へのこだわりは並大抵のものではない。
「しかし、同じテーマでも対象の聴講者に合わせて表現やニュアンスを変えます。営業の方へは闘志を燃やしモチベーションへ着火できるように「勝つためには~しましょう!」。でも同じ言葉を小学生に向けたら強すぎるので「~してみたら、楽しくなるかもよ」と言い換えたりします。
どうしたら思いが伝わるか、『刺さる』のか。それが講演家としての思いやりだと考えています」
ひとつの講演をする準備に、最高で11日間もスライドを作りこんだことがあるそう。
頂くお金だけじゃなく、ご依頼いただいた気持ちへ恩の倍返しができなければ、プロ失格というスタンス。
ご依頼いただいたテーマで伝えられる内容を自分の中から掘り起こし、取捨選択し、スライドに使う写真を選んで・・・という作業をしていると時間はかかるが、自身の思いを伝えきるために一切妥協はしない。
講演で人を「動かす」ために
講演には3つのレベルがある
のぶき氏の考えや講演内容を紹介するために、「もし若手社員向け」の講演ならどんなお話をしますか?と伺った。
「まず主催者が聴講者へどうなって欲しいのかをヒアリングします。そして僕が聴講側に座っていたら、このプロギャンブラーから何を聴けば、主催者の望む人間になれるかで講演の中身を作っていきます。自分にして欲しいことを相手にしていくだけです」
ギャンブラーとしても講演家としても「思いやり」を忘れないのぶき氏。
稼ぐプロのスタンス・営業術・リスクマネージメント・目標達成術・決断術・勝ちグセでモチベーション&メンタル創りなど。
聴講者各自のメモで作成するワークショップも織り交ぜつつ、自身の濃厚な「プロ15年の流儀」の経験を基に一回限りの講演コンテンツを創りこむ。
そしてその内容を、TEDxに3回登壇した際に修練した圧倒的なプレゼン力で聴講者へ伝えていく。
「講演には3つのレベルがあると考えました。伝える、伝わる、動かす。お金と時間を頂くプロの講演家として『動かす』レベルに昇華させないと講演家失格だと考えています」
「講演で全員を動かすことはできない。でもわざわざ半年後とかに主催の方から、『売り上げがあがったんです」『おかげさまで絶好調です」と感謝のメールをよくいただく。わざわざメールをくださるだけで感謝しかないです。」
実際にのぶき氏とお話していると「刺さる」言葉がある。
「『ジョブズさん(=米アップル社、ピクサー社創業者)がやっていたからこうやりましょう』という知識を僕は持ちあわせてない。僕はこんなスタンスでこう工夫したら目標達成できました、という経験の話しかできない。逆に、だからこそ『動かす』のかなと」
「スランプぽいぽ~い」
営業職の成約数・成約率の向上はどの企業にとっても、もっとも重要な課題。
つねに勝率にこだわってきたのぶき氏からは「スランプぽいぽ~い」という言葉が。
「自分の実力とは、『底』のラインのこと。
不調のときの成約件数が実力です。例えば、平均の成約件数が20件で、月10件~30件が過去の成績だとします。実力は10件と考えます。あとはその時々の運がファクターとなって、平均の20件になったり、ラッキーな30件になったりします。30件の翌月にいきなり10件になってしまった!と思うと、人はスランプだと悩むのですが、それが元々の実力なんです。たまたま今月のラッキーがなかっただけのこともあるんです」
「もちろん、『昨日の自分に勝てる自分を創れ』と伝えているように、改善は勝ち続けるために重要です。けれど、ベストな過程をこなしているのに、スランプだと自意識してしまうことで『何がいけないんだろう』 というジレンマに陥ることはよろしくない。改悪にもなりかねないということです。
「勝率や平均というのは分母が増えていく中で落ち着いていくもので、だったら気持ちを切り替えて次のドアを叩いたり、電話をかけたりして分母を増やすこと。運は誰にもコントロールできず、運に左右される分は仕方ないんですから」
専門はブラックジャックやポーカーであるのぶき氏。
「運」への価値観にも頷くところが多かったが、興味深いのは「運は引き寄せられない」とのことだった。
「だって赤い勝負パンツの縁起がいいなら、みんながそれを履いているはずです。でも実際そうじゃないですよね」
ゲン担ぎはしないがルーティンはある
「遊んでいて努力を怠たり、実力不足を自覚しているからゲンを担ぎたくなるのです」
とバッサリ。
「勝ちにこだわるな、勝つ準備にこだわれ」がモットーののぶき氏らしい回答。
ただし、勝因へ理論がつけられるルーティンはあるそう。
例えば、カジノでの勝負前は一切食事をとらず、「良い波」が来るまでは何時間でも粘る。
良い波は1分で来ることもあれば、14時間で来ることもある。
食べないことで14時間を集中し続けられるとのことだった。
講演前も同様で、「自分との勝負なんです」と食べずに挑む。
「仮に今回が人生最期の講演になっても、誇れる講演を!」と最高のパフォーマンスができるよう突き詰めている。
今回のタイトル「一瞬賭命」とは、のぶき氏の創った格言で、
「この一瞬に命を賭け、何が得られるのか。人生自体がギャンブルです」という意味のことばだそう。
伝えることへのこだわり
職業「プロギャンブラー」
実はのぶき氏のこだわりは肩書にも表れている。
「15年間ギャンブルだけで食べてたから、プロギャンブラーと名乗っているだけです」、とのことだったが
しかしこの肩書が「刺さる」。
ビジネスマン向けの講演会で、「ギャンブル」で生計を立てている人はどのようなヒリつく勝負の世界で生きてきたのか、と想像を掻き立てる。
「例えばIT企業の方から講演依頼をいただくとして、講師リストの中に一人だけ『プロギャンブラー』って書いてあったら「えっ!?」て思いますよね(笑)。そういう流れで呼んでもらって最高の講演をする。その講演直後、4名から講演依頼いただくことが昨年だけで4~5回ありました。最高の営業とは、目の前の仕事を最高のおもいやりでこなすこと。勝負と変わりありません」
取材時点で講演回数は合計260本。
現在も毎週ペースで講演依頼があり、取材の月は12本に取り組む。
依頼元もテーマも異なるが、一つひとつ丁寧に創り込んでいく。
「人生には3つの段階があります。『インプット』『咀嚼(そしゃく)』『アウトプット』です。勝つために勉強していたころや、カジノに通っていたころはインプットと咀嚼だけをしていました。講演させてもらったら、『プロギャンブラーの話すげえ!』と言ってもらえてすごくうれしくて」
伝えること、それによって聴講者をプラスへ「動かす」ことが何よりうれしいと話すのぶき氏。今は日本へアウトプットするという勝負に全力だ。
メモ帳とクリッカー
のぶき氏はやるべきことをすべてリスト化している。
思いついた瞬間に書き込むため、メモを24時間持ち歩いている。
「お金を頂くなら、常に次の講演を頭に意識すべき」。すると、改善点がひらめく。そのひらめきをメモして、最高の講演を目指す。
講演の前後で、準備と改善にはメモ帳。
一方で講演の最中に使うのがプレゼン用のクリッカーだ。
「ほかの講演家は何で使わないの?って思ってます(笑)」
以前『TEDx』に登壇した際、世界最高峰の舞台では他のスピーカーがどのような講演をしているのか、丸2年間学び続けたとのこと。
そして、講演の最中において大切なのは、聴講者と自分の間に壁を作らないことと気づく。
では、『TEDx』登壇者はその「壁」をどう取り払っているのか。
「民間でロケットを打ち上げた植松さん(株式会社植松電機 専務取締役)の動画をみていたのですが、あの人っていつの間にかスライドを操作しているんですよ。
Hope invites | Tsutomu Uematsu | TEDxSapporo
いつ操作したの?って本当に気が付かない。
スライドを操作するときにいちいちコンピュータのボタンへ意識を向けると、聴講者とのアイコンタクトが外れてしまい、その瞬間に心の一致から仕事へと変化してしまうんですよ」
自分の言葉を「刺す」ために必要なことは聴講者との一体感。
講演で「一体感」を生み出すために何が必要か。
リズムよくスライドを出して、意見と疑問を投げかけていく。
「違和感をできるだけなくし、一体感を生み出すために必要な道具が僕にとってはクリッカーですね」
使い込まれた道具を見ると積み重ねてきた歴史を感じる。
プロギャンブラーは講演でもプロだった。
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匠 のこだわり
メモ帳 / クリッカー(コクヨ フィンガープレゼンター 黒曜石)
メモ帳は紙を輪ゴムで束ねたもので、黒と赤のペンを一緒にしている。
輪ゴムはオリジン弁当に付属するもの。
逆に携帯電話は目の前の集中を妨げるので、所持していない。
実はお札が挟んであり、財布も兼ねている。
「お金ってとことん使い倒すものです。使われてはいけないんです」
クリッカーはコクヨ製。
講演中にクリッカーが目立たぬよう、肌色の塗料でぬった跡すらある。
「スライド操作を意識させないためにクリッカーが必要です」
指や指示棒にはめることができ、指先までボディーランゲージで伝えられる。
スライドの戻し、送り以外にも画面の暗転ボタンもついている。
パワーポイントを中心にした講演スタイルでは重宝しそうだ。
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