Vol.5 「プリズンコンサート」400回のデュオ Paix2(ペペ)

Posted on 6月 29, 2018 by


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匠 vol.5『プリズンコンサートがつなぐ塀の中と外』
受刑者のアイドル Paix2(ペペ)

 

 

ぺぺ 北尾まなみ氏(左)と井勝めぐみ(右)氏


 

受刑者のアイドル Paix2(ペペ)とは

 

paix2(ぺぺ)


 

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鳥取県出身の女性デュオ Paix2(ぺぺ、2はxの2乗)は2000年の活動開始以来、「プリズンコンサート」と称して矯正施設でメッセージコンサートを展開し続けている。

 

被害者の思いを胸に、受刑者の心のスイッチを押し続けており、活動に関する執筆活動も行っている。2014年法務大臣より『保護司』に任命され、Washington Post(ワシントンポスト)で紹介。2015年法務大臣より『矯正支援官』に任命される。2015年 結成15周年記念 ミニアルバム『しあわせ』を発売。

 

活動18年目を迎え、プリズンコンサートの述べ回数は400回を超えた。
二人の活動の意義が社会的に認知されつつある。

 

近頃は講演会も精力的に取り組む。
「トーク&コンサート」を持ち味とする二人の活動は、ファンやサポーターを増やし続けている。
スピーカーズ編集部がPaix2のこだわりと今後の展望について詳しく伺った。

 


「慰問」ではなく、「コンサート」

 

「プリズンコンサート」がライフワークとなっているおふたり。
講演についてはどのような方々から依頼を受けているのだろうか。

 

 

 

講演活動への取り組み

井勝めぐみさん(以下、めぐみさん)

「直近では仏教関連の集まりでお話しました。住職の方の前や檀家さんに向けてお話することは割とありますね。
それから学校やPTA。
それから更生保護団体の集まりでコンサートを行ったり、福祉施設に伺ったり。
法務省が主唱する『社会を明るくする運動』の一環でお話やコンサートをすることもよくあります。」

 

 

コンサートというと一般には歌がメインだが、トークがメインの講演会との違いはどこにあるのだろうか。

ぺぺ 北尾まなみ氏(左)と井勝めぐみ(右)氏


 

めぐみさん

「我々は歌手なので、基本的にはトークだけというより、トーク&コンサートというスタイルです。
最近、トークだけの出演も、とある大学でやったのですが、Paix2の楽曲はメッセージ性が強いので歌もトークの一環として考えています。
歌の内容をトークに絡めていく、という構成です。」

 

 

「慰問」という言葉を使わないこだわり

 

ぺぺ 2003年鹿児島刑務所でのコンサート


著書『逢えたらいいな』(鹿砦社、2012/4/21)に記されているが、お二人は「慰問」ではなく「プリズンコンサート」という言葉を使い続けている。

「慰問」は「見舞ってなぐさめる」という意味で、歌手や著名人が刑務所などの矯正施設に行って受刑者たちと交流する際にはこちらの言葉が一般的。

「プリズン(=刑務所)コンサート」ということばに込められた思いを伺った。

 

北尾まなみさん(以下、まなみさん)

「刑務所の中にいる人は基本的には加害者の方。
そういった方々を慰めに行く、ということばに対して疑問が生まれてきたんです。

せっかく同じ時間・空間を共有するのだから、私達はその場にいる方々だけでなく、被害に遭った方々の事なども考えられる場にできれば良いなという思いを込めています。」

 

「今年でこの活動を初めて18年目ですが、塀の中の人には目上(年上)の方も多いのです。
特にこの活動を始めたてのころは人生経験もないので、そうした人たちに説教はできませんよね。

ですから受刑者の方から頂いた手紙などを紹介して、何かを感じたり考えたりしてほしいなって。
だからこれは慰問じゃなく、メッセージを携えたコンサートということでプリズンコンサートとしています。」

 

400回を超えたプリズンコンサート。
活動18年の中で印象的だったコンサートは。

 

めぐみさん

「矯正施設でのイベントは様々な制限の中でやるもの。
一般の方向けのコンサートと違いがあるとすれば、雰囲気やお客さんの表情ですね。」

 

「地元でワンマンコンサートをやった際、社会復帰された方や矯正施設の職員、昔から応援してくれていたファンの方などが集まってくださったんです。
ある意味では異色のお客さんですよね。

この場にいるお客さんこそがPaix2の歴史そのものだなと思いました。」

 

矯正施設でのコンサートには様々な「制限」がある。
声援や私語は禁止で、基本的にリアクションは拍手のみが許されている。

塀の外で行うワンマンコンサートでは異なった反応があるのだろうか。

 

 

めぐみさん

「ワンマンコンサートは私達の地元、鳥取で開催しました。
私達を応援してくださるファンの方々は割と年齢が高い方が多く、お行儀が良いんです。
わっと盛り上がる空気ではないんですが。

 

でもワンマンコンサートでは暖かい空気を出してくれますね。
どちらも緊張感がある中でコンサートするという意味では似ています。」

 


 

塀の外のもう一つの「塀」

 

ぺぺ 北尾まなみ氏(左)と井勝めぐみ(右)氏


 

Paix2の活動はいわば「塀の内と外をつなぐ活動」。

しかし一方で、被害者の感情というものもある。
「加害者に対するコンサート」を続ける中で犯罪被害者からの批判はなかったのだろうか。

 

 

「加害者」と「被害者」の感情の間

 

めぐみさん

「過去に同じ様な質問を取材で受けたことがあります。

『批判があるのではないですか?』という質問に対して『批判もあるだろうという心づもりでやっています。しかし現時点では受けたことはありません。』とお答えしました。

その記事を読んだ犯罪被害者の方が私達にメッセージを送ってくださったんです。

 

『私は被害者の一人です。でも私はPaix2さんの活動はとても意味があるものだと思っているから応援しています。』と。」

 

「被害にあったのにもかかわらず、私達の活動を応援してくださっている方が少なくとも1人はいた、ということを大切にしようと思って活動しています。

今のところ面と向かって批判されたことはないです。
もちろん、いろいろなことを感じられる方もいらっしゃるでしょう。」

 

 

社会復帰の難しさ

 

矯正施設の実情について、私達はほぼ無知で無関心ではなかろうか。

被害者がいる一方で、加害者も罪を償った後に社会に戻る日がやって来る。
一度失敗を犯した人が社会復帰するときに待ち受ける困難とは。

 

 

めぐみさん

「これは難しい質問です。

元々矯正施設に入ってしまう境遇の方は社会に馴染めず、周囲と異なった考え方を持ったがために孤立し、過ちを犯してしまうような人生を送ってしまったんじゃないかと感じます。

様々な事情があるのでしょうが、その人が社会に入った時点で、まず一般的なルールに従って生活を送るのが難しいんです。」

 

「その人が社会のルールに馴染んで生きていけるようになるまでには時間がかかるということ。
そういった人には周囲の人のケアが必要なんだと理解して接していかないと、また犯罪を犯して矯正施設に戻るようなことになってしまいます。」

 

「社会復帰しようとしている人がすぐに上手くいかなくても、周囲が『この人は元受刑者だから(ダメなんだ)』と認識しないようにしないといけないのかな。」

 

 

まなみさん

「保護司として活動をしていて思うのは再犯率の高さについてです。

おそらく前科があるというだけで働きにくい世の中ですし、採用してくれるところも多くはないはず。
他方で、最近では就労支援などもありますし、仕事が長続きしないというのは本人の性質の問題であることもあります。」

 

 

「しかし、社会的に挫折をした人にもチャンスを与えられる世の中にしていかないと、また犯罪を繰り返してしまうことになります。

私達はプリズンコンサートを通して矯正施設にいる方々と接しているので免疫があるかもしれませんが、一般の人はそうではないということももちろんわかります。

施設を出てからお客さんとしてコンサートに来てくれる方もいるし、社会に馴染むためにすごく頑張っている方もいると知っています。」

 

 

「人々がそういった事情を知ってくれるだけで、社会全体がガラッと変わると思っています。
私達のステージで少しでもそういうことを知らせていけたらいいなと。」

 

 

ぺぺ 北尾まなみ氏(左)と井勝めぐみ(右)氏


 

ボランティアを続ける理由

 

ホリエモンこと堀江貴文氏は長野刑務所に収容されていた際にPaix2のプリズンコンサートを体験。
堀江氏のように目と耳の肥えた方でも素晴らしいと称賛したクオリティの高いコンサートだが、
経済的なメリットの少ない活動でもある。

あえてそこに向き合い続けてきた理由やモチベーションはどこにあるのだろうか。

 

めぐみさん

「私達はインディーズ時代にたまたま鳥取刑務所で第一回目のプリズンコンサートをやりました。
その後2年位たってから、そのコンサートを見ていた方が社会復帰されてコンサート前に花束とお手紙を持って会いに来てくれました。

最初、この活動にどんな意味があるのだろうか、と感じながらやっていたのは事実ですし、
当時は駆け出しでそんなことを思ってもらえるような水準のコンサートは出来ていませんでした、今と比べると…。」

 

「でもそういうことを思ってくれる人が1人でもいたんだと知った時に、我々はこの活動を続ける意味があるんじゃないかと感じるようになりました。

単純ではありますが、Paix2のおかげでと思ってくれる人が一人でもいることが励みになっています。
挫けそうになった時、もらった手紙がモチベーションになっています。」

 

 

幸せとは

 

講演テーマとして「幸せとは」を掲げるPaix2。
ある意味人類にとって永遠のテーマだが、塀の中と外で幸せの意味は変わるものなのだろうか。

ぺぺ 井勝めぐみ氏



 

 

めぐみさん

「これもとても難しい質問です。笑

たぶん、受刑者の方がいざ塀の中に入って生活を送った時に、たぶんこの塀の中にいた自分よりも、社会にいたときの自分のほうが幸せだったなと思う人のほうが多いんじゃないかなと思うのです。
自由を限りなく奪われた場所なので。

だから塀の中にいる人にとっての幸せって社会にいたときも苦しかったけど、そのときの自分のほうが幸せだったんじゃないかと思うような場所じゃないかと推測しています。」

 

「普段の私達は自分の幸せを『外』に求めてしまいがちです。
なぜなら、足りないものばかりを考えてしまうからです。

仕事辛いな、働きたくないなとか自分の感情に基づいて生きているわけです。」

 

「でもそうではないですよね。
仕事がある、家がある、ご飯を食べられる身体がある。

感じようと思えば、今この時間が幸せなんだと感じられることが幸せの定義でしょうか。

コンサート中も、被害者の方を思えるような気持ちになってもらえたらいいなと思っています。
社会のために目を向けられる人になれるように、でもそれを直接言わずに感じてもらいたいなと。
この質問が一番難しかった。笑」

 

 


 

応援されるという経験

 

 

クラウドファンディングをご存知だろうか。
クラウドファンディングとは、資金調達の手段の一つ。

インターネット上でアイデアやプロジェクトを公表し、それに共感した人が少額の資金を提供するという仕組み。
個々の金額は少額だが、プロジェクトによってはSNS上で情報が拡散することもあり、1000万円を超える金額が集まった例も。

 

Paix2のお二人も「ふるさとの日本酒の歌を作りたい」というプロジェクトを立上げ、目標達成率240%と見事な成功を収めたばかり。

今後は地元を応援する活動にも取り組んでいくのだろうか。

 

 

クラウドファンディングとの出会い

 

まなみさん

「この企画については私がほぼ全部やりました。
名刺にもありますが私は鳥取市の観光大使を委嘱されています。

私達はふるさとがとても好きなんですが、全国各地で鳥取の話をする中で、鳥取の日本酒は美味しいと教えてもらったんです。 酒造があることを知ってはいたのですが。
意外にみなさんは知らないようで。」

 

めぐみさん
「砂丘ぐらいしか。笑」

 

まなみさん

「鳥取は、東部・中部・西部と区分されることが多いんですが、地区ごとにガラッとお酒が変わるんです。

一つの県内でこれだけお酒の味が変わるというのも珍しいのかなと。
もちろん全部は知らないんですけど。

そういう地元の良さを全国の人に知ってもらいたいですし、実際に来てもらって地のものを食べてもらいつつ、地酒を楽しんでいただきたい。」

 

 

「元々はクラウドファンディングってなんだろうと、説明会を聞きにいっただけだったんです。
そこでなにかやってみませんか、という話になったときに、そういえば今度お酒の歌を出すからそこでチャレンジしてみようかと。」

 

「正直私はちょっと宣伝のつもりで挑戦してみようという心づもりでした。
目標額を設定するにあたって、本当に1万円しか集まらないと思っていたので。笑」

 

めぐみさん
「あっはっは。笑」

 

まなみさん

「今回の企画で本当に嬉しかったのは、いろいろなところで知り合い、親しくなった方々も応援してくれたこと。

最近でこそすごい活動をしてますよねといってもらえるようになりましたが、最初の頃はなんでそんなところで歌ってるの?とあまり理解してもらえないことが多かったんです。」

 

「私達を応援してくれる人がどれくらいいるのか。
わからないまま走り出してきたところがあるのですが、今回本当に多くの方々に応援して頂いているんだなと実感することができました。

 

また、今回この企画を立ち上げるにあたって協力してくれた方もすごく多かったんです。

それを目的にコミュニケーションを取っていたわけではないですけど、これまでの活動でできたつながりを大切にしてきてよかったなと。」

 

 

めぐみさん

「これをきっかけに鳥取県知事に会えたんですよ。笑

会えたというか酒造組合の方々と一緒に、鳥取県のためにもなるような活動になるよということでお邪魔したんですけど、ペペレケと。笑

 

県知事はギャグがお好きな方なんですが、へべれけをアレンジしてコメントをいただくことができて、それが新聞の記事になったりしたのでそういう意味でも良い活動になったなと。」

 


一般の方に現状を知ってほしい

 

応援してくれていた方々の思いや、Paix2の活動に共感してくれている方々の熱量が可視化されることになったクラウドファンディング。
さらに挑戦してみたいことや今後行ってみたい場所は。

 

ぺぺ 北尾まなみ氏


 

まなみさん

「今回、みなさんとこういう関わり方があると知ったので、新たな可能性を感じてはいます。
またこういう形でみんなと気持ちがまとまることができたらいいなと思っています。」

 

トーク&コンサートという私達ならではのものを前面に出していくのであれば、できるだけ一般の人たちにも聞いてもらいたいです。
社会を明るくする運動などに呼んでいただくと、一般の方ももちろんいらっしゃるのですがどうしても関係者の方々の割合が多くなってしまいますから。

矯正施設の現状を一番知ってほしい人は一般の人なので、そういった方々に来ていただきたいです。」

 

めぐみさん

「私達の活動に関心のない方にね。それは私もよく考えます。」

 

 

 

プリズンコンサートを経験した人や矯正施設の関係者などにはPaix2の活動の社会的意義が伝わっている。
社会全体にメッセージを伝えるために、活動18年目を迎えてなお新たなコミュニケーション方法を模索している。

 

多様性を認めようという世界的な潮流が、日本にも押し寄せている。
失敗した人がもう一度チャレンジすることを認め合う社会が求められている。

私達は「この人は元受刑者だから」の意識を持たない市民になるために何ができるだろうか。

 


 

Paix2(ぺぺ)への講演の依頼はコチラから!!

 

匠 のこだわり

めぐみさんがこれまでの活動を綴ってきたノート

paix2のノート
矯正施設内では基本的に写真を取ることができない。
そういった事情もあって経路や時刻、会場の雰囲気やその時々の思いを記録し続けている。
その場で書けなければメモを取って後から書くという。
19冊目になるノートには二人の歴史が刻まれている。

Web:Paix2公式サイト

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